『眠聖伝』
第一章:目覚めし者の誕生
眠聖スリーピィ・ルナは、伝説の地「スリーピアの谷」で生まれました。彼女の誕生は、夜空に突然輝く星が現れたことにより予言されていたといいます。幼少期のルナは他の子供たちとは異なり、眠りを極めて愛し、その中で不思議な夢を見続けました。その夢には、柔らかな光の中で囁く神々の声が満ちており、彼女はそこから神々の意志を感じ取るようになりました。
彼女の両親は最初、ルナの長時間の眠りに心配しましたが、やがてその眠りが特別な力を秘めていることを悟ります。ルナが眠りから覚めるたびに、彼女は家族や近隣の人々に深遠な助言を与え、その通りに行動すると必ず良い結果がもたらされたからです。
第二章:神々との交信
10歳の時、ルナは最初の啓示を受けます。彼女の夢の中に現れたのは、猫神スヤリーニャでした。スヤリーニャは、布団に包まれた眼だけが爛々と輝いた状態で現れ、ルナにこう告げました。
「眠りとは、我ら神々とつながるための神聖な扉である。」
この啓示を受けたルナは、眠りを通じてさらに深く神々と交信する方法を学び始めました。やがて彼女は、特別な神具を使うことで夢の中に留まり、明晰な意識を保ちながら神々の言葉を聞く技術を習得しました。この能力は、眠りの秘儀「スリープ・ディープ」として後にスリーピア教の教義の中心となります。
第三章:奇跡の始まり
ルナが17歳の時、彼女の故郷が大規模な飢饉に見舞われました。村人たちは絶望し、祈ることしかできなくなっていました。そんな中、ルナは神々からの啓示を受け、眠りの中で村の未来を見ることに成功します。その夢で見た指示に従い、彼女は村人たちに特定の草を煎じて飲むように指導しました。その結果、村人たちの健康は急速に回復し、奇跡的に飢饉を乗り越えることができました。この出来事は、「眠りの奇跡」として語り継がれています。
第四章:教団の創設
20歳になったルナは、スリーピア教を正式に創設しました。彼女は各地を旅し、眠りの神聖さと、布団や枕が持つ力について説きました。彼女の説教は柔らかく温かいもので、聞く者の心を自然に和らげ、深い安らぎを与えるものでした。
教団設立の際に彼女が掲げた言葉は今も寝者たちの心に刻まれています。
「眠りはすべての始まりであり、すべての終わりである。我らが布団に身を委ねるとき、世界は再び整う。」
彼女は特に布団や枕を神具とし、寝者にそれらを大切に扱うよう説きました。この教えは、現代でもスリーピア教徒の日常に深く根付いています。
第五章:神秘的な最期
ルナの晩年は、多くの奇跡で彩られました。彼女の眠りを見守るだけで病が癒えた者、彼女の夢の助言によって大災害を避けられた都市など、彼女の存在そのものが神聖とされました。
ある満月の夜、ルナは最後の説教を終え、静かに「スヤリーニャの猫布団」に横たわりました。そして眠りに入り、二度と目覚めることはありませんでした。しかし、彼女の顔は安らぎに満ちており、彼女が永遠に神々と共にあることを示していたと言われています。猫に埋もれて顔しか見えなかったルナの体は、その顔も猫で埋まった瞬間に消えてしまいました。
終章:眠聖の遺産
眠聖スリーピィ・ルナの生涯は、現在もスリーピア教徒たちに深い影響を与えています。彼女が使用した布団や枕は神具として崇拝され、彼女の言葉は聖典に記されています。寝者たちは、彼女の教えに従い、日々の眠りを神聖なものとし、そこから得られる安らぎと力を生きる指針としています。
ルナの教えはこう締めくくられています。
「眠りの中に真理を見出す者は、目覚めの中にもまた真理を見つける。」
スリーピア教の象徴である「静寂の羽衣」は、彼女の遺志と神々の加護を宿した永遠の安息の象徴となりました。